育児休業を取得後に正社員から契約社員になるよう追い込まれ1年で雇止めとなったと主張してマタハラ被害を訴えAさんが慰謝料請求をしていた事件で、2019年11月28日東京高裁はマタハラに該当せず会社に違法性はないとしてAさんの主張を退け、逆転敗訴を言い渡しました。また、2015年10月に開かれ主要メディアが報道した記者会見でのAさんの発言(「会社から自主退職か契約社員かを迫られた」「子どもを産んだら人格を否定された」)は、事実と異なると東京高裁は認定し、これらの発言により会社の名誉が傷つけられたとして、女性に対して55万円の賠償が命じられ、Aさん勝訴の1審判決がくつがえされる形となりました。本件の事実関係の詳細は把握していませんが、一般論としてハラスメントをめぐる裁判では立証が困難な場合が多く、上訴審で結論が変わることも珍しくはないので、訴訟で徹底的に戦うとなれば紛争が長期化するリスクはかかえることになり、さらに記者会見で世間にマタハラ被害を受けたという話をしたことで逆に会社の名誉を害したとして賠償を命じられるリスクがあります。ハラスメントトラブルは、当事者双方にとってダメージが大きくなりがちです。マタハラ問題はどの企業でも起こりえますし、離職率を下げて人材の定着を図るという観点からも、企業は「マタハラにあたるかどうか」というレベルより1段階上の「誰もが働きやすい職場」を目指して、マタハラトラブルの予防に取り組むことが大切で、そのためには怒りの感情とうまく付き合いながら適切なコミュニケーションに落とし込む技術やフェアマネジメント(従業員間の不公平感の解消)の取り組みが欠かせないと感じています。