スポーツの世界ですばらしい指導者だと思う人は誰ですかと問われると、
何人か頭に浮かびますが、
今日は、元智辯和歌山野球部監督の高嶋仁さんを取り上げたいと思います。

高嶋さんは、甲子園で通算68勝(歴代1位)、3回の優勝を誇る名将です。

体力の限界ということで2018年に監督を退任されました。

監督は監督になって4年目ぐらいのとき、練習試合には勝利したものの
試合内容に不満があったことから、
チームに活を入れるため厳しい練習を指示したところ、
選手らは、音を上げて、練習を途中で止めて帰ってしまったという出来事がありました。

この出来事をきっかけにこれまでの一方的な指導には問題があり、
選手たちに練習の必要性を「理解をさせる」ことの大切さに気付いたとのことです。
そこで、野球部員の人数を1学年につき10人に絞り、
1人ひとりと向き合って指導をしてきました。

そうして、その後チームを甲子園で3回優勝に導きました。

強制ではなく理解が大切」、「1人1人と向き合って指導」する。
この考えは、スポーツ指導の本来のあり方だと思います。

 その後、監督は、2008年ぐらいに大きな挫折を経験することになりました。

当時、甲子園で、ある選手(その後プロ野球選手)が個人プレーをして試合に負け、

チームメイトみんなで悔しい思いをしたにもかかわらず、直後の練習試合で、
その選手がまた同じような個人プレーをして試合に負けたことから、

監督は、「仲間の気持ちを考えろ」と言って、その選手を蹴ってしまったそうです。

監督は、謹慎3ヶ月となりましたが、当時を振り返り、次のように言っています。

「愛情をもって手を出すってそんなことありえないですよ、

自分の経験からいうと『この野郎』と思ってやっぱりやってしまうんですよね。

自分が一生懸命教えたのに出来へんのかという、
そういう自分の指導力の無さっていうのをそこへやっぱりぶつけてるわけです。」

 

この出来事の後、監督は、二度と体罰をしないと決意し、忍耐力をつけるため、
週に2回、午前2時に起きて高野山までの20キロの山道を歩いたそうです。

怒りの感情に反射して、選手を蹴ったことを率直に認め、二度と同じ過ちを繰り返さない
ように過酷な苦行を重ねたわけですが、強い覚悟が感じられます。

アンガーマネジメントは、まさに怒りの感情に反射しない技術をレクチャー
するものであり、スポーツ指導の世界にも活用していくことが望ましいと考えています。